SSブログ

「支払い猶予期間」と会計年度 [かわうそ@暦]

□「支払い猶予期間」と会計年度
 今日からは、新しい年度平成32年度が始まるという区切りの日です。そんな、多くの人にとってのスタートの人なるはずの日なのですが、今年は武漢肺炎のおかげで、すんなりスタートできない方も多いでしょうね(私も多少影響を受けています)。そんなイレギュラーな年ですが、一応新会計年度開始ということで、会計年度の話です。日本では国などの予算の執行期間は原則として一年単位で区切られた単年度制を導入していますが、この一年の区切りが暦の一年の区切りである大晦日と元日(12/31と1/1)とは 3ヶ月ずれた3/31と 4/1の間にあります。国や地方自治体などの一年は暦の一年というより、この会計上の一年の方がより重要な意味を持っており、暦の上での一年と区別するため「会計年度」あるいは省略して「年度」などと言い表すようになっています。

◇4/1 開始の会計年度はイギリス生まれ
 日本の会計年度の始まりが現在の 4/1に落ち着いたのは明治19年(1886年)のことで、それまでは何度も変更されました。会計年度がこの時期になった理由については、幾つか理由がありますがその一つは当時の強国、イギリスの会計年度が 4/1から始まっていたと言うのもその大きな理由の一つと考えられます。決算時期が互いに一致している方が貿易などをする上ではいろいろと都合がいいと言うわけです。さて、では日本が見ならった(?)イギリスの会計年度の開始日はどうやって決まったのかというと、それは「支払いの猶予期間」と関係がありました。

◇昔のイギリスは、3/25が年の始め
 以前の暦のこぼれ話、3/25は年の始めの日? ( http://koyomi8.com/doc/mlwa/200903250.htm )に書いたとおり、ヨーロッパでは伝統的な一年の始まりは春分の頃に当たる3/25が新年の始めの日と考えられていました。イギリスにおいても1751年までは、3/25が年の始まりでした。この当時のイギリスにおいては現在のような暦年と会計年度の開始時期の違いは無く、どちらも3/25に一年が始まっていました。また、この当時イギリスが使っていた暦は現在のイギリスが使っているグレゴリオ暦ではなく、その前身であったユリウス暦でした。宗教上の理由からグレゴリオ暦への改暦には抵抗していたイギリスでしたが、周囲の国々の多くがグレゴリオ暦に改暦してゆく中で、暦が異なることによる不都合に次第に抗しきれなくなって1752年にグレゴリオ暦へ改暦することになりました。そしてこの時に、年の始めもそれまでの3/25から 1/1へと変更しました。さて、年の始まりが3/25から 1/1に変更になりましたが、現実の世界ではそう簡単に年の始めを変更するわけにはいきません。お金のやり取り、決算時期が「一年」に連動していたからです。「その年のお金の支払いはその年の内に」が基本ですから、その支払いの時期を3/24ではなくて、それより 3ヶ月近くも早い 12/31に変えろと急にいわれても「はいそうですか」と言うわけにはいきません。そこで、それまでの年の始めであった3/25から区切りの良い 4/1に移動させて、この日を会計処理上の年度の始めとしました。

◇支払いの猶予期間は 1週間
 さて、年度の初めを3/25から 1/1に変更するよりは 4/1の方が近いわけですが、それでもこの間には 1週間のずれがあります。しかし幸いなことに当時のイギリスの商習慣には、支払い期日には 1週間の猶予期間を設けるというものがありました。支払いの期日を過ぎても、 1週間以内であれば違約とはならず、延滞金等も発生しないというものです。年内の支払いの約束であっても、 1週間なら猶予期間内ということになります。それまでの一年の終わり3/24が支払いの期日だとしても新しい会計年度の終わり3/31までに支払いを済ませればこの猶予期間内ということで問題ないというわけです。会計年度という考え方とこの猶予期間をうまく使えば、改暦によって起こる実生活での混乱を最小限に留めることが出来ると考えたことで、イギリスの会計年度は 4/1開始となり、それが遙か東方の日本にも影響を与えて、私たちにもおなじみの、役所の一年である「年度」となったのでした。(「2020/04/01 号 (No.4932) 」の抜粋文)

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。