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夏至の日に地球を測った男 [かわうそ@暦]

□夏至の日に地球を測った男
 明日は夏至。日本においては夏至は梅雨時で、強烈な陽差しを送って来るはずの太陽が厚い雲に覆われてしまっていて、その存在感が無いので今ひとつ盛り上がりに欠けるのですが・・・。盛り上がりに欠けるとはいいながら、夏至は夏至。いろいろと特別な日なので、そんな特別な日を上手く利用した人の話をしてみようと思います。

◇シェナの不思議な深井戸
 エジプトのシェナ(現在のアスワン)の町には深い井戸がありました。この井戸はとても深くて、いつもは覗き込んでも暗くてその水面を見ることが出来ません。ですが一年に一度だけ、夏至のに日はこの井戸の水面に日が射してきらきら輝くことが知られました。

◇エラトステネス
 この不思議な深井戸の噂を聞いて興味を持った男がおりました。彼の名前はエラトステネス。アレキサンドリアに住む数学、天文学、地理学、文献学など広い分野で活躍するエジプトの学者でした。一年に一度、夏至の日にシェナの不思議な深井戸の底に日の光が射し込むと聞いた彼は、それはその日に太陽がシェナの真上を通るからだと考えました。そして同じ日(つまり夏至の日)にアレキサンドリアで棒を立て、太陽の高度を測ってみました。測定の結果、アレキサンドリアでは太陽は真上ではなく、真上から 7.2°低い場所までしか昇りませんでした。エラトステネスは月食が月に落ちた地球の影によるものだと考えていて、その影の欠け際がいつも丸いことから地球は丸いのではないかと予想していましたから、この夏至の日の太陽の高度の違いも地球が丸いから起こる現象ではないかと考えました。だとすれば・・・シェナの町とアレキサンドリアの距離は5000スタジア(約 925km)と両地点の太陽の高度角の差から地球の大きさを測ることが出来る!と彼は考えました。図を書いて考えれば簡単にこの原理が判ります(手近の紙と鉛筆でこの関係を書いてみてくださいね)。

◇地球の大きさ
 以上の関係を式に書き表せば、

  7.2° : 360° =  925km : X km (X が地球の全周距離)

 この関係から Xを求めれば、

  925km × 360°÷ 7.2°= X = 46,250km

 となります。現在の測定では全周は約40,000kmですから、その誤差は16% ほど。この測定がなされたのは紀元前 195年の。今から2200年も前のことだと考えると驚異的!ただし、実際にはシェナとアレクサンドリアは同一の子午線に有るわけではありません(約 3°ずれている)し、シェナは北回帰線上にピッタリ有るわけでもありません(北へ60kmずれている)。さらに両地点の距離にも大分間違いがある(本当は725km?)など、この計算結果自体はかなり誤算の多いもので、誤差16%は「偶然にいい線いった」といった感じです。結果オーライといったところです。まあ、結果オーライ、幸運な結果かも知れませんが、そんなことはこの時代に地球が丸いという証拠を子午線距離を測るという直接的な行動で示したという言う偉業の前にはとるに足らない問題です。

◇お月様の上に
 ちなみにこのエラトステネスは、その数々の業績をたたえられ、月のクレーターにその名前を留めています。月面のエラトステネスクレーターは雨の海の畔の、直径58kmの美しいクレーターです。子供の頃、望遠鏡でのぞいて、何度かエラトステネスクレーターのスケッチをしたことを思い出します(あの頃の月面のスケッチ集、どうなっちゃったかな?)。(「2018/06/20 号 (No.4281) 」の抜粋文)
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