恵方と恵方巻き [かわうそ@暦]
■恵方と恵方巻き
明日は節分。節分と言えば最近は関西圏を飛び出して全国区の行事になった感のある「恵方巻き」というものがあります。そんなわけで、本日は恵方巻きと恵方巻きの言葉に登場する「恵方」について採り上げてみることにしました。
◇恵方は方角による占いから
恵方巻きを食べる際に向かなければならないという「恵方」という方角ですが、この恵方は方角による吉凶判断から生まれたものです。元々は正月に年神が来臨する方角ということでしたが、九星術という方角占いが流行してそこに登場する歳徳神という吉神のおわす方角とされるようになりました。九星術の方角占いには沢山の神様(もちろん架空の)が登場します。どうしたわけかこの沢山の神様の多くは悪神でその神様がいる方角に向かって何かすると良くないことがあるというのがこの占いの基本的なパターンです。
「引っ越ししようとしたけど、方角がよくないので来年まで待てと言われた」
なんて云う話を今でもたまに耳にしますが、こうした話の元です。悪い方角は「塞ぎ(ふさぎ)」とか「塞がり」などと呼ばれます。「いやー、八方塞がりでどうしようもないんだよ」なんて、話の中に登場する「八方塞がり」という慣用句はこの方角による吉凶判断から生まれた言葉です。八方(全方向)が悪い方角になってしまっては、どうにも動きがとれませんので、身動きがとれない状況を「八方塞がり」と言ったわけです。さて、回り道になりましたがようやく恵方の話。現在の恵方は歳徳神という○○易断△△暦といった運勢暦の扉あたりに描かれている女神様のおわす方角ということになっています。この歳徳神は力のある吉神で、この神様がいらっしゃる方角であれば、他の悪神がいてもその悪い影響を免れるとされています。この方角を「恵方(えほう)」とか「明の方(あけのかた)」と云います。塞がっていないから明の方というわけか。
◇恵方はどうのように決められているのか?
歳徳神は年毎にその居場所を変える神様とされています。歳徳神のいらっしゃる方角が恵方ですから、歳徳神が年毎に居場所を変えるので恵方も年毎に変わります。では、歳徳神はどちらにいらっしゃるのかというと、これは案外簡単な規則で決まっています。それは次の通り。
甲・己の年 甲の方角(寅卯の間) ≒ 東北東
乙・庚の年 庚の方角(申酉の間) ≒ 西南西
丙・辛の年 丙の方角(巳午の間) ≒ 南南東
丁・壬の年 壬の方角(亥子の間) ≒ 北北西
戊・癸の年 丙の方角(巳午の間) ≒ 南南東
5方向かと一瞬思いますが、「丙の方角」が 3番目と5番目に重複して登場しているので、実は4方向だけ。案外大したことはなさそうです。「甲・己の年」とあるように、年の十干によって決まっているのです。十干なので、10年毎に巡回しますから、年の十干と西暦の対応をどこかで確認すれば、あとは西暦の年数さえわかれば恵方はわかることになります。この原理に従い年の十干と西暦の下一桁の対応はどうなっているかというと
甲(4) 乙(5) 丙(6)丁(7) 戊(8) 己(9) 庚(0) 辛(1) 壬(2) 癸(3)
のようになっています。これと先に書いた年の十干と恵方の関係を整理すると、西暦年の末尾1桁が
0,5 なら西南西
1,3,6,8なら南南東
2,7 なら北北西
4,9 なら東北東
となります。今年の西暦は末尾が 4ですから、恵方は東北東(甲の方角)となります。
◇恵方と恵方巻き
江戸時代には自分の住んでいる場所から見て恵方に当たる方角にある寺社に詣でる恵方詣(えほうもうで)が盛んだったそうです。娯楽の少なかった時代には恵方詣にかこつけて、物見遊山なんてところだったと思われます。さて現在に目を転ずると近頃は全国区となった感のある「恵方巻き」という節分行事があります。この行事の発祥の地は大阪の商人の街として知られる船場あたりといわれています。歴史としてはせいぜい 100年ちょっと程度の比較的歴史の浅い風習のようです。節分の日には恵方に向かって太巻きを丸かじりする(しかも、食べ終わるまで無言で・・・)この行事のことを知らない人が見たら、とっても不思議(不気味)な光景の恵方巻き。恵方巻きをPRするポスターなどをコンビニエンスストアなどでよく見かけますが、恵方巻きを購入した人たち(家で作る人もあるかな)は、本当にこんな風にして恵方巻きを食べているんでしょうかね?
※かわうそ宅では、やってます。
年中行事の中には近年、この行事に関連する商品の販売促進を行おうという動きがありますが、近年の恵方巻きの慣習の拡大もそうしたものの一例。恵方巻きを食べるという節分の日は海苔業者団体が「のり巻きの日」という記念日としていることから、どんな業界がこの日を「推している」かがよくわかります。この業界団体と、この業界団体と手を結んだ(?)コンビニエンスストアの努力の結果、関西の一部の地域で行われていた恵方巻きが現在では全国区の行事となって、海苔の消費拡大に一役買っていることと思われます読者の皆様の中にも節分の日に無言で太巻きを食べるという方がいらっしゃると思います。関西発のこの恵方巻きという行事、今はどの辺りまで拡がったのでしょうね?
(「2024/02/02 号 (No.6334)」の抜粋文)
明日は節分。節分と言えば最近は関西圏を飛び出して全国区の行事になった感のある「恵方巻き」というものがあります。そんなわけで、本日は恵方巻きと恵方巻きの言葉に登場する「恵方」について採り上げてみることにしました。
◇恵方は方角による占いから
恵方巻きを食べる際に向かなければならないという「恵方」という方角ですが、この恵方は方角による吉凶判断から生まれたものです。元々は正月に年神が来臨する方角ということでしたが、九星術という方角占いが流行してそこに登場する歳徳神という吉神のおわす方角とされるようになりました。九星術の方角占いには沢山の神様(もちろん架空の)が登場します。どうしたわけかこの沢山の神様の多くは悪神でその神様がいる方角に向かって何かすると良くないことがあるというのがこの占いの基本的なパターンです。
「引っ越ししようとしたけど、方角がよくないので来年まで待てと言われた」
なんて云う話を今でもたまに耳にしますが、こうした話の元です。悪い方角は「塞ぎ(ふさぎ)」とか「塞がり」などと呼ばれます。「いやー、八方塞がりでどうしようもないんだよ」なんて、話の中に登場する「八方塞がり」という慣用句はこの方角による吉凶判断から生まれた言葉です。八方(全方向)が悪い方角になってしまっては、どうにも動きがとれませんので、身動きがとれない状況を「八方塞がり」と言ったわけです。さて、回り道になりましたがようやく恵方の話。現在の恵方は歳徳神という○○易断△△暦といった運勢暦の扉あたりに描かれている女神様のおわす方角ということになっています。この歳徳神は力のある吉神で、この神様がいらっしゃる方角であれば、他の悪神がいてもその悪い影響を免れるとされています。この方角を「恵方(えほう)」とか「明の方(あけのかた)」と云います。塞がっていないから明の方というわけか。
◇恵方はどうのように決められているのか?
歳徳神は年毎にその居場所を変える神様とされています。歳徳神のいらっしゃる方角が恵方ですから、歳徳神が年毎に居場所を変えるので恵方も年毎に変わります。では、歳徳神はどちらにいらっしゃるのかというと、これは案外簡単な規則で決まっています。それは次の通り。
甲・己の年 甲の方角(寅卯の間) ≒ 東北東
乙・庚の年 庚の方角(申酉の間) ≒ 西南西
丙・辛の年 丙の方角(巳午の間) ≒ 南南東
丁・壬の年 壬の方角(亥子の間) ≒ 北北西
戊・癸の年 丙の方角(巳午の間) ≒ 南南東
5方向かと一瞬思いますが、「丙の方角」が 3番目と5番目に重複して登場しているので、実は4方向だけ。案外大したことはなさそうです。「甲・己の年」とあるように、年の十干によって決まっているのです。十干なので、10年毎に巡回しますから、年の十干と西暦の対応をどこかで確認すれば、あとは西暦の年数さえわかれば恵方はわかることになります。この原理に従い年の十干と西暦の下一桁の対応はどうなっているかというと
甲(4) 乙(5) 丙(6)丁(7) 戊(8) 己(9) 庚(0) 辛(1) 壬(2) 癸(3)
のようになっています。これと先に書いた年の十干と恵方の関係を整理すると、西暦年の末尾1桁が
0,5 なら西南西
1,3,6,8なら南南東
2,7 なら北北西
4,9 なら東北東
となります。今年の西暦は末尾が 4ですから、恵方は東北東(甲の方角)となります。
◇恵方と恵方巻き
江戸時代には自分の住んでいる場所から見て恵方に当たる方角にある寺社に詣でる恵方詣(えほうもうで)が盛んだったそうです。娯楽の少なかった時代には恵方詣にかこつけて、物見遊山なんてところだったと思われます。さて現在に目を転ずると近頃は全国区となった感のある「恵方巻き」という節分行事があります。この行事の発祥の地は大阪の商人の街として知られる船場あたりといわれています。歴史としてはせいぜい 100年ちょっと程度の比較的歴史の浅い風習のようです。節分の日には恵方に向かって太巻きを丸かじりする(しかも、食べ終わるまで無言で・・・)この行事のことを知らない人が見たら、とっても不思議(不気味)な光景の恵方巻き。恵方巻きをPRするポスターなどをコンビニエンスストアなどでよく見かけますが、恵方巻きを購入した人たち(家で作る人もあるかな)は、本当にこんな風にして恵方巻きを食べているんでしょうかね?
※かわうそ宅では、やってます。
年中行事の中には近年、この行事に関連する商品の販売促進を行おうという動きがありますが、近年の恵方巻きの慣習の拡大もそうしたものの一例。恵方巻きを食べるという節分の日は海苔業者団体が「のり巻きの日」という記念日としていることから、どんな業界がこの日を「推している」かがよくわかります。この業界団体と、この業界団体と手を結んだ(?)コンビニエンスストアの努力の結果、関西の一部の地域で行われていた恵方巻きが現在では全国区の行事となって、海苔の消費拡大に一役買っていることと思われます読者の皆様の中にも節分の日に無言で太巻きを食べるという方がいらっしゃると思います。関西発のこの恵方巻きという行事、今はどの辺りまで拡がったのでしょうね?
(「2024/02/02 号 (No.6334)」の抜粋文)
2024-02-02 16:28
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