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桃の節供のこぼれ話 [かわうそ@暦]

□桃の節供のこぼれ話
 本日は三月三日、言わずと知れた桃の節供の日です。毎年、この時期には桃の節供の話を採り上げることになります。そして今年も既に何度か関連の記事を載せてきましたので、真面目な話はそうした記事をお読み頂くとして、本日はそうした話からこぼれた話を幾つか拾ってみます。

◇上巳の節供・・・今日は巳の日か?
 一般には桃の節供とか、雛の節供、雛祭りなどと呼ばれることの多い三月三日の節供ですが、本来の名前は上巳の節供 (じょうしの せっく)この名前は、本来この行事が三月の「初めの巳の日 = 上巳」に行われていたことからこう呼ばれたのでした。では、今日は巳の日かというと残念ながら違います。今日は2023/3/3は「申」の日です。ついでなので、2024,2025,2026の3/3も日の干支を調べてみると、

  2023:申, 2024:寅, 2025:未, 2026:子 (新暦 3/3)

 のようになっています。そうか、新暦では上手く行かないのだね。やはり伝統行事は旧暦の日付でないと・・・とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうが残念なことに旧暦の日付でもそうはなりません。前述した4年について、旧暦の 3/3の日の干支を同様に示してみると

  2023:巳(※戌), 2024:巳,  2025:亥,  2026:亥 (旧暦 3/3)
  ※は閏 3/3の日の干支

 となります。今年と来年は目出度くも「巳」となり、昔々の「上巳」の日となりましたが、2025,2026を見てもらえば判るとおり、旧暦だからといって、三月三日が毎年が巳の日になるわけではありません。上巳の節供は本来はきちんと「巳の日」に祝われていたのでしょうが、そのうちに日付に固定した方が分かりやすいと考えられたのか(?)、暦の月と日の数字の重なる「三月三日」に固定されて現在に至りました。伝統行事といっても、時代が変わって人々の生活も変わってゆく中で、そうしたものを全て否定して「何が何でも昔通りに」なんてことをして、その行事自体が消えてなくなっては元も子もありません。どこかの部分は時代や利便性を考慮し、どこかの部分は本来の意味を残す、こうしたバランス感覚が必要なようです。ちなみに、暦の日付に固定してこの節供が祝われるようになったのは劉備や曹操、孫権などが活躍した中国の三国時代のことと云われていますから、上巳の節供が、上巳の日に行われなくなってから、既に2000年近い年月が経過していることになります。

◇節供を過ぎたら雛人形を早く片づけないと婚期を逃す?
 よく聞く話です。まあ、迷信ではありますが、上巳の節供の行事の内容から考えると判らないこともない迷信です。現在は上巳の節供に飾られる雛人形は、その年一年きりというわけではなく、節供が過ぎれば片付けられてまた来年を待つことになりますが、こうした飾り雛は室町時代になってから広まったもので、それ以前の人形の役割は、その持ち主の身に付いた「穢れ(けがれ)」を人形に移して、これを川や海に流してしまうものでした。つまり、人形は不幸や穢れなどといった不吉なものを本人に代わって、遠くに運び去ってくれるものなのですからいつまでもそこにあってはいけないわけです。こんなところから、お雛様が節供を過ぎても飾られていることは一種の禁忌となって、こんな迷信が生まれたのではないでしょうか。

◇「せっく」は「節供」
 上巳の節供と私は「節供」の文字を使っていますが、「せっく」を漢字に変換すると真っ先に出てくるのが「節句」です。私の場合、その「節句」を見て、更に次の候補を見て「節供」を選びます。「節」は特別な日を現す「節日(せつび)」の節。一年のうちの折目節目となる日の「節」で、そうした日には神様に供物を捧げます。「節供」は節日に神様に捧げた供物が本来の意味で、それが転じて節日そのものを指す言葉になったものです。ということなので「供物」の「供」が本来の文字と考えられます。ちなみに「節日」という漢語が日本にやって来るまではこうした折り目の日は「ヲリメ」と呼んでいたらしいです。ヲリメは「折目」ですね。余談ですが、年越しから正月にかけての「お節料理」の「おせち」はこの節供の際に出される特別な料理のこと。今では正月以外では聞きませんが。最後に、せっかくなので上巳の節供についてのWeb こよみのページの関連記事の宣伝を一つ(三つ?)。

 ・桃の節供(桃の節句・雛祭り・上巳の節供)http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0726.html

 ・「桃」じゃなかった桃の節供の花 http://koyomi8.com/reki_doc/doc_1515.html

 ・節句の話・五節供とは http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0724.html

 お暇があればお立ち寄りください。

                          (「2023/03/03 号 (No.5998)」の抜粋文)
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