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【蟷螂の斧】(とうろうの おの) [かわうそ@暦]

【蟷螂の斧】(とうろうの おの)
 (「斧」はカマキリの前脚を指す。小さなカマキリが前脚をふりあげて大きな車に向かってゆくという、「荘子」などに見える話から)自分の微弱な力量をかえりみずに強敵に反抗すること。はかない抵抗のたとえ。「蟷螂が斧」「蟷螂が斧を以て隆車に向かう」とも。平家物語(7)「蟷螂が斧を怒らかして隆車に向ふが如し」 《広辞苑・第七版》

 蟷螂(とうろう)はカマキリのことです。蟷螂の斧の故事には次の様なものがあります。昔、斉の荘公が狩りに向かう途中、荘公の乗る車の車輪の前に立ち塞がり、車輪に向かって今にも斧を振り下ろそうとしている小さな虫がいました。荘公が御者にその虫の名を尋ねると御者は、「カマキリ(蟷螂)です。この虫は進むことのみを知って、退くことを知りません。自分の力を知らずに、軽々しく大敵に向かって行きます。」と説明しました。これを聞いた荘公は「ああ、この虫がもし人間であったなら、きっと天下一の勇者となったことだろう」と言って、その天下の勇者に道を譲るように、この虫を避けて車を進めさせた(『韓詩外伝』)という故事があります。荘公はその勇気を称えましたが多くの場合、カマキリのこの行動は無謀な行いと考えられます。天下一の勇者になるためには、まず生き残らないと。その昔、我が家に一匹のカマキリが住み着いていたことがあります。晩春に見つけたときには最初は小さくて華奢なカマキリでした。その小さなカマキリが柿の木の葉っぱの裏に隠れるようにぶら下がっていました。そのカマキリは無謀な戦いはしなかったのか生き残り、夏の頃には立派な大人のカマキリになっていました。あのカマキリはもうとっくに死んでしまっているでしょうが、もしかしたらその子孫が、あの柿の木あたりに住んでいるんじゃないかと、柿の葉っぱの裏側が気になってしまうかわうそです(今年はまだ発見出来ずにいます)。蟷螂は、日本ではカマキリというくらいで、その前足は「鎌」に見立てられていますが、今日取り上げた中国の故事からすると中国では「斧」と見立てるようです。斧ですか? 国によって見方が違いますね。違うと言えばこの虫の英名は「mantis」。このmantisの語源はギリシャ語の「預言者」を指す言葉だとか。あの前足を上げた姿を祈りの姿と見たようです。昔、我が家に住み着いているカマキリも、いつも前足を上げていましたが、あの前足を上げながらカマキリは何を祈っていたのでしょうか?その日一日の餌とその日一日の命だったかな?

                          (「2023/06/07 号 (No.6094) 」の抜粋文)
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