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標準時の話 [かわうそ@暦]

■標準時の話
 日本とイギリス(英国)とでは、9時間の時差があります。例えば、

   日本 5/14 08:30
   英国 5/13 23:30

 のような具合に、両国の時刻の間には9時間の差があります。ご覧のとおり、日本の方が9時間進んでいます。この例のとおりで日本の朝9時までは、イギリスはまだ「昨日」の日付となります。

◇時差の生まれる原因
 これは皆さんがよくご存じのとおり、「地球は丸いから」ですね。1日は24時間といいますが、その1日というのはどういうものでしょう。非常に素朴な概念としては、日出から次の日出までの長さが1日。もちろん日出でなくて日没でもかまいません。イスラムの宗教暦であるヒジュラ暦などは今でも日没が一日の起点としています。さて、日出あるいは日没で1日を区切るというのは非常に解りやすいのですけれど、この方法では1日の長さが季節によって大きく変化してしまうと言う問題が起こります。日刊☆こよみのページの日出没時刻を毎日見ていればお解りになるとおり、おおむね冬から夏へ向かう期間は日出時刻は日々、少しずつ早まり、逆に夏から冬に向かう期間は遅くなります。つまり、日出の間隔によって1日の長さを決めると、冬から夏に向かう間は、1日の長さが短めになり、夏から冬へ向かう間は長めになります(日没を基準にすると、この関係は逆になります)。ということで、日出没よりこうした変化が少ない安定した現象(しかも、解りやすい現象)はないかと考えて、使われたのが太陽の南中時刻。つまり、太陽が真南を通過する時刻です。南半球では南中時刻ではなくて、北中時刻になりますが、ひとまず北半球中心で「南中時刻」としておきます。

※南北両半球で共通に使えることばとして、「上方正中時」という言葉を使うこともありますが、まあ、あまり聞かない言葉ですね。余談でした。さて、南中時刻と次の南中時刻の間隔を1日とすると、この長さは結構一定で、使いやすい時間の単位となりました。「結構一定」と書いたとおりで、数十秒単位の差は生まれてしまうのですが、本日の話とは直接関係ないのでこの話はまたいずれ。さて、太陽の南中の間隔を測って1日という長さが決まり、これを24等分して1日24時間という時刻の体系が作られました。この方式ですと、何処ででも簡単に時刻系が作れます。ということで、世界各地でこんな1日24時間の時刻体系が使われるようになりました。とても便利でいいのですが、既にお気づきのとおり、天体の日周運動は地球の自転運動によって起こる現象なので、これによって起こる太陽の南中の瞬間を1日の起点とすることを丸い地球の上で行えば、その地の経度の違いに1日の始まりの瞬間がまちまちになってしまいます。こうして、時差が生まれました。

◇標準時の誕生
 でも、「まちまちでもいいんです」という時代が長く続きました。まちまちとはいっても、南中の瞬間の差が1時間となる経度差は15°です。経度差15°は日本のある緯度35°あたりで考えると約1370kmにもなります。赤道地帯であれば、その距離はさらに長くて約1670km。長いことこんなに長い距離を、しかも1時間の差が問題となるほどの短時間で移動する手段はありませんでしたから。天文学などの分野では、例えばある場所で日食の起こる時刻を予測するためには、この時差の問題を考える必要がありました。しかしこの場合は、机上で経度差分の時差を足したりひいたりするだけなので、日常生活に影響を与えるようなことはありませんでした。では、何が問題になったのかというと、それは「鉄道」の出現です。例えば、東京と大阪の間を移動することを考えます。両者の経度差は約4.2°、時差を考えると約17分です(東京の方が進んでいる)。さてここで問題です。東京発9:00発の列車に乗って 5時間の鉄道の旅をしたとすると、大阪着の時刻は?今なら、何の問題もなく 14:00着となるはずですが、まちまちに時刻を決めていたとすると、大阪駅の着時刻は 13:43となるはず。でも乗客であるあなたの時計は 14:00。こうなると、仕事先との打ち合わせだけでも大変です。国を超えた鉄道網の整備が早くから進んでいたヨーロッパでは、この問題は笑い事ではなくて、標準的な時刻系が必要となりました。そして、1884年の国際子午線会議において、グリニッジ子午線を本初子午線(基準の子午線)とする標準時、タイムゾーン(TIME ZONE)の整備が行われました。日本においては1886(明治19)年に東経135°を日本標準子午線とすることに決定(時刻は、グリニッジ標準時+9時間)と決定し現在に到っています。なお、台湾を統治していた時代には、東経120°を基準とした西部標準時もあり、これと区別するために、東経135°を標準とするものを日本中央標準時と呼びました(現在も、その痕跡が残っています)。

◇標準時は人間の都合次第?
 標準時は、経度15°単位で区切られたタイムゾーンを基本にします。これは、丸い地球を経度方向で24等分し、時刻としては1時間単位で区切ったためです。ですが、これを使う人間は経度とは関係ない「国」のような社会単位をその活動の基盤としておりますので、単純に経度15°で標準時が分けられているわけではありません。だいたいは、国単位であったり、ロシアやアメリカのような大きな国土を持つ国では州などの行政単位に沿って標準時を定めています。「だいたいは」と書いたのは、そうでもない例もあるから・・・。何せ、決めるのが人間ですから、いろいろ勝手に変えるのです。単に経度15°で分ければ、グリニッジ時刻から-12~+12時間の間に入りそうな標準時が、現在使われているのは-12~+14時ということで、その辺の事情が解ります。また、インドの +5:30,ネパールの+5:45,ちょっと前までの北朝鮮の+8:30といった、半端(?)な標準時を用いる国もあります。そして、その北朝鮮のように突然標準時を+9:00に変更するなんていうことも。ちなみに、2015/8/14までは北朝鮮の標準時は+9:00でしたので、3年弱で元に戻したともいえます・・・。暦や時刻などは、科学的に決められていると思っている方が多いのですがそれは誤解だと言うことが、この標準時の一つをとってみてもよくわかります。「ある地点の日の出の時刻を知りたい」といった場合、その経緯度さえ解れば計算自体は出来るのですが、その答えを表す時刻としてどの標準時を用いればよいのかは、計算だけでは知ることが出来ません。ああ、面倒くさいなー。(『2018/05/13 号 (No.4243)』の抜粋文)

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2018-05-13 [twitter投稿]



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エゴノキ(ピンクチャイム)! [ヘッダー画像]

180508no6.JPG
別名:チシャノキ(萵苣の木)
福智山ろく花公園
撮影日:2018.05.08
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KAGAYA (@KAGAYA_11949) [twitter投稿]




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