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2022-11-06 [twitter投稿]



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月食(2022)と大地の形 [かわうそ@暦]

■月食(2022)と大地の形
 明後日の夜は満月。そしてその満月は月食となります。明後日の話ではありますが「家族で眺めて見よう」なんて予定を立てるのであれば、当日だと間に合わないという声がある(と思う)ので、二日前倒しで書いておきます。今回の月食は、日本全土で月食の初めから終わりまでを見ることの出来る、日本にとって、とっても条件の良い月食ということが出来ます。しかも皆既月食です。今回の月食の状況は次の通りです。

 18:09 欠け始め
 19:16 皆既月食始まり
 19:59 (食分最大 1.36)
 20:42 皆既月食終わり
 21:49 欠け終わり

です。いやー、楽でいいな、月食は。これが日食だと「各地の状況」として、札幌では、東京では、福岡ではと、沢山の数値を書き込まなければいけませんが、月食だとこれだけで済む。札幌でも東京でも福岡でも、皆同じ瞬間に起こるのでこれだけで全部をまかなえてしまう。ホント、楽ちんです。月食で各地の情報が必要だとすると、その地での月出没の時刻とその日の天気くらいのものです。ということで、今回の月出没の時刻を考えると、日本全国で欠け始め~欠け終わりまで見えることが分かったので、わざわざ出没時刻を書くまでもない。ホント、条件のいい(日本にとって&かわうそにとって)月食です。なお、各地の情報が必要となるもう一つの「天気」については、こよみのページの守備範囲外ですので、気象庁やお天気予報の会社の予報をご覧ください。明後日の夜は、晴れて、この条件の良い月食が見えるといいですね。
 
◇この世界は球
 さてここからは、明後日の月食にかこつけて(?)、勝手に書きたい話を書いてしまいます。それは、月食が教えてくれる大地の形の話です。「この世界は空間に浮かんだ球である」紀元前 6世紀のギリシャで、こう言って聴衆を驚かせた人物がいました。この名はピタゴラス。ピタゴラスは世界を旅しながら、数学の分野で優れた業績を残したギリシャの哲学者です。「直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい」というピタゴラスの定理でおなじみにあの方です。今でこそ「この世界は空間に浮かんだ球である」なんて、当たり前の話なのですが「世界は宙に浮かぶ平らな円盤である」というのが当時のピタゴラス以外の多数の哲学者。ピタゴラスはこの多数の意見に異を唱えたわけです。

◇月食は大地の影
 ピタゴラスを始めとする当時の哲学者の幾人かは、月食が私たちの住む大地(地球)の影であると既に考えていました。そうした目で月食の時の影の形を観察したピタゴラスはこう考えました。もし私たちの住む世界が円盤ならば、月に落ちるその影の形は私たちの世界と月の位置関係によって、その形が大きく変わるはずだと。お皿を真上から照らせばその影は円ですが、斜めから照らせば楕円形になり真横から照らせば、幅の狭い線になります。自分たちがその皿の上に載っていると考えると、月が真上に見えるときの月食の影は円形だが、斜めに見えるときや、月が昇るときや沈むときの月食の影は楕円や直線にならないとおかしいはず。ピタゴラスはこう考えました。そしてどの角度から照らされても影が円形に見える形は何かと考え「それは球である」と結論したのです。

◇天体は完全な形のはず
 ピタゴラスは天文学者というより数学者です。そしてその数学者であるピタゴラスは、もっとも完璧な幾何学図形は円であり、もっとも完璧な立体は球であると考えました。私たちの住むこの大地も空に浮かぶ天体である月や太陽も神が作ったもの。神が作ったものが完璧でないはずはない。それならその形もきっと完璧なはず。月も太陽も見かけは円であるが、球を遠くから眺めてもそれは円に見える。これだけでは天体が円形なのか球形なのかの判別はできない。しかし月食を観測し、月に落ちる我々の大地の影を観察すると、それは天体が球形でなければ説明のつかないことから、この世界は空間に浮かんだ球であると結論したのでした。明後日の晩、天気さえよければ、月食の欠け際の形を眺めて「ああ、私たちの住む世界は球形なんだな」と2500年前のピタゴラスの気分に浸って感じてみてください。

◇余計なことながら
 「神が作った天体の形は完璧なはず」というピタゴラスや彼の後継者達の観念論はやがてヨーロッパに広く普及し、それから2000年あまり後のルネッサンス期の学者達を悩ませることになります。そうした話も、そのうちどこか(ここか?)で書いてみたいですね。

                          (「2022/11/06 号 (No.5881) 」の抜粋文)
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