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【鶏肋】(けいろく) [かわうそ@暦]

【鶏肋】(けいろく)
 1.[後漢書楊修伝「夫鶏肋、食之則無所得、棄之則如可惜」]鶏のあばらぼね。
(少しは肉があるので捨てるには忍びないの意から)大して役に立たないが捨てるに惜しいもの。
 2.[晋書劉伶伝「鶏肋不足以安尊挙」]体の弱小なことのたとえ。「あなたの座右の銘は?」

 もし、この瞬間にこう尋ねられたら間違いなく出てくるであろう言葉が本日とりあげた「鶏肋」です。本業の関係で何年かに一度は引っ越しをしなければならないのですが、その際に毎回問題になるのが、この鶏の骨。もちろん本当の鳥の骨ではありません。部屋から出てくる大量の資料やらなにやら。何かの記事を書いたときとか、プログラムの修正を行っているときに使ったメモや印刷したプリントアウトの束など。確かにその作業中には必要だったし、もしかしたらいつか関連した作業をすることがあれば、あった方がよさそうにも思えるのですがいつか役に立つかもで役にたったものって、まず滅多にはない。多くは「一応とっておこう」と思って以来、何年かは開くこともなかったメモ。もったいない気もするけれど、多分役に立つことはまずないでしょうから「鶏肋、鶏肋」とつぶやきつつゴミ箱へ。そんなわけで、ここ二、三日はこの言葉の御厄介になっています。

◇「鶏肋」とは
 この言葉は三国志に登場します。劉備が漢中の地を奪って漢中王を名乗ったことに怒った曹操が漢中を攻めますが、劉備軍の反撃にあって苦戦。このまま戦いを続けるべきか撤退するべきか迷った曹操がつぶやいたのがこの言葉だとされます。曹操がこの言葉をつぶやくのを傍らで聞いた部下の楊修は、曹操が撤退を考えたのだと悟って、自分の軍に撤退準備を始めさせたというのが、この言葉の出典となった話。楊修がなぜ撤退と悟ったかと部下に問われたときに「鶏肋はなめればまだ味がするので棄てがたい気もするが、結局は棄てるしかない。曹操にとって今の漢中の地がこの鶏肋なのだから、結局はこれを棄てて撤退するということだ」と楊修は説明しています。かねてより曹操はこの部下、楊修を「知恵の差三十里」評してその明晰な頭脳には一目置いていました。ただしこの鶏肋の一件は、そんな頭脳明晰な楊修にも予想できない結果を生んでしまいます。楊修軍がいち早く撤退準備を完了していたことを訝しんだ曹操が、その理由を調べさせると、楊修が上記の説明を部下にしていたことをを知ることになりました。曹操は自分の命令も出ていないうちから楊修が勝手に撤退準備を命じたことに激怒し、楊修を処刑してしまったのです。揚州の勝手な行動を責めてというのは、あくまでも建前。本当は、曹操自身がまだ決めかねているような問題を悟ってしまうような楊修ですから、いつか曹操に背くようなことがあれば曹操も楊修にはかなわないかもしれない。権力者にとっては敵以上に優秀すぎる部下は危険だと考えた曹操が、将来の危険を未然に防ぐために、この優秀すぎる部下を除いてしまったというのが本当のところでしょう。曹操の「鶏肋」の一言で、曹操の悩みを見破るほどの楊修でしたが、さらにその先の曹操の考えまでは悟れなかったようです。私にとっては、こんな危険はないと思いますが、とりあえず目の前の問題の大量の資料との戦いにおいては「鶏肋」と思い定めて、ポンポン捨てることが唯一の勝利への道のようです。さ、頑張ろう!

                          (「2023/04/12 号 (No.6038) 」の抜粋文)
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