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【初夢合せ】(はつゆめあわせ) [かわうそ@暦]

【初夢合せ】(はつゆめあわせ)
 初夢によって吉凶を占い判ずること。 《広辞苑・第七版》

 年の初めに見る夢、初夢によってその一年の運勢を占う風習があり、これが今回取り上げた「初夢合せ」です。初夢の中で吉兆の夢とされるものは「一富士、二鷹、三なすび」この後さらに「四綿、五煙草」と続きます。これらの品々、風景は静岡辺りの名産品。静岡は天下人となった徳川家康が晩年を過ごした場所(当時は駿府といいました)ですから、どうやら家康の「吉」にあやかろうとして考えられたもののようです。

◇「初夢」の日付
 「初夢合せ」に入る前に、初夢の日付について少し触れておきます。本日(1/2)の記念日には「初夢の日」があります。その説明によると「1月2日の夜から3日の朝にかけて見る夢を初夢とする」とあります。辞書も引いてみると

【初夢】元日の夜に見る夢。また、正月2日の夜に見る夢。古くは、節分の夜から立春の明けがたに見る夢。 《広辞苑・第六版より抜粋》

 とあり、こちらも1/2~3の間の夜に見る夢となっています(「節分の夜」はひとまず置くとして)。
 この1/2~3日説は江戸時代に拡がったものといわれています。よい初夢が見られるという縁起物の宝船の絵が

  お宝~、お宝~

 という売り声とともに売られるのが2日の日だった(初売り?)ので、これを買って枕の下にこれを敷いてよい夢を見ようと考えれば、2日の夜ということになったという説があります。商売によって生まれた慣習なのかなと思われます。日本におけるバレンタインデーやホワイトデーのような商業主導の年中行事の走りみたいですね。ただ、ごく普通に初夢は元日~2日にかけてみる夢という考えもあって、近頃はこちらの方を初夢ととらえる人が増えてきている気がします(統計とかとっていないので、私の個人的な感覚です)。

◇初夢と宝船の絵
 前の説明に登場した「宝船の絵」についても、ちょっと寄り道して書いてみます。初夢によってその年の運勢を占うという行事は室町時代から拡がり始めたものだと言われます。枕の下には、七福神を乗せた宝船や、打ち出の小槌など縁起物を並べた宝づくしの図柄が描かれた絵を置きました。これによって吉夢をみようとしたのです。この絵は元は、米俵を描いただけの単純なものだったようですが、徐々にそれが複雑になっていったもののようです。ちなみに宮中では今もって単純な俵の絵だとか。枕の下に絵を置いて吉夢を見ようとする風習自体は中国から伝来したもののようです(中国の絵は夢を食べる動物と言われたバクの絵だとか)。江戸時代には正月になると枕の下に置くための絵を売り歩く商売があるほどですから宝船の絵を枕の下に敷くという風習はかなり広く行われていたようです。

◇初夢は夢の占い? それとも呪(まじな)い
 現代の我々の感覚からすれば、初夢の夢占いはあくまでも運勢の善し悪しを見るものですが、昔の人の感覚では、初夢はやがて起こる出来事の前兆であり、その前兆に相応しい未来が訪れると考えていたようです。単に占うためだけであれば、何も宝船の絵を枕の下に置く必要が無いですからね。目出度い初夢は目出度い未来を生み出すという考えがあったからこそ、あらかじめ吉夢を見て運命をコントロールしようとする呪い(まじない)の一種と考えられます。現代では初夢からこうした呪いの要素が薄らいできたからでしょうか、枕の下に宝船の絵を入れるという習慣は大分廃れてきたように思えます。何はともあれ、読者の皆さん(ついでに私)の今年の初夢合せがよいものとなりますように。

                          (「2024/01/02 号 (No.6303) 」の抜粋文)
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