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【楊子岐に泣く】(ようし きになく) [かわうそ@暦]

【楊子岐に泣く】(ようし きになく)
 楊子が分かれ道を見て泣いた。(自分の意思で)どちらを行くかによって、南にも行き、北にも行ってその方向の差が甚だしい。たった一歩の小さな選択の違いが、取り返しのつかない大きな差になってしまう。楊子は分かれ道を前にして、人が人生の岐路に遭遇した時に、どちらか一つの道を選ばなければならない苦しさ、哀しさを思い、悲嘆して泣いた。『荀子』王覇篇にある言葉です。面白いのは、岐路に立って泣いた人物が楊子という人物であったことです。楊子は徹底した個人主義、快楽主義を説いた思想家です。楊子は「一本の毛を抜けば天下の利益となると分かっていても、他人の為に犠牲を払うことはなかった」といわれる程徹底した利己主義者でした。自然の本性の好むところに背かず、ある限りの快楽を否定しないという徹底した利己主義、快楽主義を提唱した楊子は、それだけ真剣に一度だけの人生を生きた人だったのかも知れません。だからこそ、一歩の選択によって失われる別の人生の可能性を思い、楊子は岐路に立って泣いたのではないでしょうか。通り過ぎてきたいくつもの岐路でのいくつもの選択を振り返って、その選択の結果失われた、あったかもしれない別の人生を思うとき、目の前に現れた新たな岐路での選択の重さを切実に感じるようになります。岐路に立って泣くのは楊子だけのことではないはずです。

                          (「2022/12/02 号 (No.5907) の抜粋文)
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2022-12-02 [twitter投稿]



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