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暦で位置を知る [かわうそ@暦]

□暦で位置を知る
 「うるう秒」の話は(その2)まで進んでいますが、本日は「うるう秒」の話には欠かせない天文時系UT(UT1)が必要とされる「時を測る以外」の話を取り上げることにします。「暦とは何をするためのものですか」と尋ねられたら、皆さんは何と答えるでしょう?

  ・日付や曜日の並んだ表のようなもの
  ・過去の記録や、将来の予定を書き込むもの
  ・日時の経過を記録し測るためのもの

 様々な答えがあるでしょうが、そのほとんどは「時を測る」あるいは、「時を記録する」といった、時刻や時間と関係するものと思われたのではないでしょうか。おそらくそれが世間一般の常識というものでしょう。本日は一般的な暦についての常識からは、ちょっと外れた暦の使い方について書いてみます。

◇日の出の時刻と位置の話
 この日刊☆こよみのページというメールマガジンには日本の主な都市における毎日の太陽や月の出没時刻が掲載されています。例えば、本日(2022/12/18)の日出没の時刻について、いくつかの地点のものを抜き出してみると

  札幌 日出 7時 0分 日没 16時 1分
  東京 日出 6時45分 日没 16時30分
  那覇 日出 7時10分 日没 17時41分

 同じ日本でも東京と那覇では日出時刻は25分の違いがあります。このように日出という現象も、見る場所が異なれば見える時間が異なることが判ります。「当たり前」のことですね。この「当たり前」のことを、ちょっと見る方向を変えた二通りの書き方をしてみます。

  1.東京の日の出は6時45分である。
  2.6時45分に日の出の見える場所に東京はある。

 さて、どうでしょうか?普通は1のような表現になるでしょうけれど、ちょっとへそ曲がりに2の表現をとることもできます。この2のような、ちょっとへそ曲がりな考えをすると、面白いことが判ります。実際の日の出の時刻を調べることによって、日の出を見た場所の手掛かりが得られるのです。あらかじめ、東京という場所(地球上の位置。経緯度)が解っていれば、計算によって日の出の時刻が計算できますが、日の出の時刻からその日の出を観測した場所の位置を割り出すことも不可能ではないのです。もっとも、今日の朝6時45分に日の出の見える場所は東京だけではなく、この同じ時刻に日の出が見える場所は無数にあり、その無数の点を繋ぎ合せると、地球の上に大きな円が描けます。

※「日の出が見える場所は・・・大きな円が描けます」と書いた円ですが、全部が日の出になるわけではなくて、半分は日没になります。そのことを、うっかり書き忘れておりました。ご指摘くださった読者の宮本様、ありがとうございました。

 6時45分に日の出を見た場所が「東京」とは断定できませんが、少なくとも地球上に描いた大きな円の円周上のどこかであることだけは判ります(そして、東京もこの円周上に或るはず)。確かに、観測点の位置の手掛かりは得られました。

◇一つで駄目でも二つ、三つあつまれば?
 位置の手掛かりがわかったとはいえ、地球は大きい。上記の6時45分に日出が起こるであろう地点を結んだ円周の長さは、ざっと4万km。これでは、手掛かりといってもな・・・。でも御安心あれ。一人で駄目でも三人集まれば文殊の知恵も出るというとおり、一つで駄目でも、日出のような現象をいくつか拾い集めたら、その地点の位置を絞り込むことが出来ます。例えば、太陽ではなくて、月や惑星、あるいは明るい恒星の出没も組み合わせてみることが考えられます。太陽以外の出没時刻でも、日出の情報で地球上に描いた大きな円と同様の円が、何本か描けます。こうして描かれる複数の円周は、観測した地点の上で交差します。もちろん、観測には様々な誤差が含まれるので、正確に位置を求めることはそれほど簡単ではないのですが原理的には暦の情報(と正確な時刻)があれば、地球上の位置を求めることが出来るのです。このように、天体の位置(日出没なども天体の位置から求めている)を用いて、地球上の位置を求める方法を「天文測位」(略して「天測」とも)といいます。今ならこんな手間暇をかけなくたって、スマートフォン内蔵のGPS 機能で自分のいる場所の情報など簡単に手に入るのですが、そうした便利なものが無かった時代には、こんな手間暇をかけて位置を求めるための「暦」が、活躍した時代もあったのです。さて、この天文測位に使われる「正確な時刻」とは、地球の自転に連動した天文時系のUT(UT1)である必要があるのです。いくら正確な時刻といっても原子時では、地球がどれだけ回転しているのかという情報が得られませんから。非常に正確な時計である原子時計が作られる時代になっても、日常的に使われる時刻は原子時計に基づく国際原子時(TAI)ではなく、天文時UT1と一定の関係を保った協定世界時UTCである理由には、暦(時刻)にはこの「位置を測る」という用途があることも関係しているのでした。本日は地球上の位置を測るための暦(時刻)の役割よいう話でしたが、今日の話も踏まえで、そろそろ「うるう秒」の話の(その3)を書こうと思っています。あんまりサボっちゃいけませんからね。

                          (「2022/12/18 号 (No.5923) 」の抜粋文)
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サイネリア(シネラリア)! [ヘッダー画像]

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和名:フキザクラ ( 蕗櫻)
2022.12.06撮影
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