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クリスマス [かわうそ@暦]

□クリスマス
 本日はクリスマス・イブ。明日はクリスマスと云うことで、避けては通れない(?)クリスマスの話です。

◇クリスマスはイエスの誕生日?
 クリスマスは何の日かと質問すれば、その答えの多くは「イエス・キリストの生まれた日」ではないでしょうか?ですが、福音書の記述にはイエスの誕生日が書かれていませんので、聖書からイエスの誕生日を直接に知ることは出来ません。そのためイエスの誕生日は福音書に書かれている誕生の前後の事実から推定するしかないのですが、そうした推定された誕生日の中に、12/25 というクリスマスの日付は見つかりません。たとえば、イエスが厩で生まれたとき、一番にこれを祝福に訪れたのは近くで野宿していた羊飼いであったとされていますが、冬のこの時期には氷点下にまで気温が下がるというシナイ半島で野宿しているというのはかなり無理が有りますし、大体冬の草のない時期に羊飼いが荒野で野宿する必要性はありません(草がないので、この時期に放牧するはずがない)。この羊飼いの記述が事実であるとすれば、イエスの誕生日は初夏の頃辺りがそれにふさわしそうです。

◇クリスマスはイエスの「誕生を記念する日」
 イエスの降誕記念日については三世紀始め頃、アレキサンドリアのクレメンスが5/20と推測しています(これだと、先に書いた「初夏の頃」に合致しますね)。現在の12/25 がクリスマスとして祝われている記録はAD336 のローマの行事を記述したフィロカロスの暦が最古のものといわれています。ここには12/25 にキリストはベツレヘムでお生まれになったと書かれているということですが、これは史実としての日付というより「太陽の誕生」の日と考えられた日付に「義の太陽の誕生」という意味で当てられたものだろうといわれています。キリスト教歳時記(八木谷涼子著・平凡社新書)によれば、12/25 日はイエスの「誕生を記念する日」であって、この日にナザレのイエスが生まれたと本気で主張するクリスチャンは子供を除いてはいないとのこと(本当か否かは、周辺にクリスチャンがいないので確認していません)。

◇キリスト教の布教とクリスマスの関係
 キリスト教は世界宗教として拡がって行く過程で、聖人の記念日の多くをキリスト教布教以前にその地で行われた行事の日付に当てるという戦略をとってきました。これは、その地域で行われている行事はそのままにして、行事の意味だけをキリスト教的なものにすり替えることによって、大きな抵抗を受けることなく、徐々にキリスト教的世界に人々を感化する戦略といわれます。12/25 のクリスマスもこの戦略の一環。この日は当時のローマでは「冬至祭り」の意味合いの日で、キリスト教以前にローマ帝国で広く信仰されていた太陽崇拝のミトラ教では不滅の太陽の誕生の日として大々的に祝われる日だったのです。太陽の誕生日が、冬至に当たるこの日とされたのは至極当然と考えられます。これに対して、キリスト教ではこの日を義の太陽(すなわちキリスト)の誕生の日としてこの冬至祭りを、キリストの誕生を祝う日へと変質させていったのです。太陽に対して「義の太陽」というキリストの象徴に置き換えたということですから、人間としてのイエスの誕生日という意味はそこにないことがお解り頂けると思います。あくまでも象徴としてのキリストの誕生を記念する日なのです。

◇二つのクリスマス
 西方教会と呼ばれるローマ・カソリックやプロテスタントの多くは、祭礼の日付を現在のグレゴリウス暦で祝います。これに対して東方正教会と呼ばれる正教会系の教会では祭礼の日付はユリウス暦を用いている場合が多いので、ユリウス暦での12/25 に当たる日(現在なら、翌年の 1/7がクリスマスとされています(日本の正教会系の教会では、クリスマスだけはグレゴリウス暦での12/25 日としているところもあるそうです)。

◇日本では?
 米国大使館と領事館のHPに掲載されている「宗教の自由に関する国際報告書(2022年版)https://jp.usembassy.gov/ja/religious-freedom-report-2022-ja/によれば、日本におけるクリスチャンの人口比率は 1%。かなり少数派ですね。その割には、「クリスマス」というイベントは定着していて多くの人がこれを祝っています。宗教的な行事と云うより世俗的な年中行事として。日本人にとって、クリスマスとはケーキを食べて、プレゼントをもらえる(またはプレゼントをあげる)日程度のものでしょうか?さて皆さん、今夜はケーキを召し上がりますか?

※宣伝。Web こよみのページのこちらのページも併せてお読みください。
 本日の記事+αの内容です。

 「クリスマス」 http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0755.html

                          (「2023/12/24 号 (No.6294) 」の抜粋文)
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